イタリア銀行のエコノミスト、Claudia Biancotti(クラウディア・ビアンコッティ)氏が1月に発表した研究論文「What if Ether Goes to Zero?」で、イーサリアム(ETH)の価格暴落が単なる価格リスクを超え、金融インフラの安定性を脅かす可能性があると警鐘を鳴らした。
同論文は、イーサリアムを単なる投機的な暗号資産(仮想通貨)ではなく、決済や金融サービスの基盤となるインフラとして捉えた上で、市場リスクがどのようにインフラリスクに転嫁し得るかを分析している。論文執筆者のビアンコッティ氏は、ETH価格が極端に下落しゼロに近づいた場合、ネットワークのセキュリティと稼働維持に不可欠なバリデーター(検証者)が離脱する可能性を示した。これはバリデーター報酬がETH建てであるため、価格低迷が持続すれば経済合理性から活動停止が相次ぐとの前提に基づく。結果として、ブロック生成の低下やネットワーク耐攻撃性の低下といった機能不全が生じる恐れがある。
この事態は単なる技術リスクではなく、ステーブルコインやトークン化資産への影響を通じて金融システム全体に波及する可能性がある。イーサリアム上で発行・決済される巨大なステーブルコイン、USDコイン(USDC)やテザー(USDT)は、価値の安定性を担保するために信頼できる基盤を必要とするが、ネットワークの混乱は送金・清算の遅延や資産凍結といった決済機能の麻痺を引き起こすというのがビアンコッティ氏の警告だ。既存のインフラ依存度の高さゆえに、ETH価格リスクが直接的なインフラリスクへ転換する可能性を論じている。
ビアンコッティ氏はまた、こうしたリスクを放置すべきではなく、パブリックブロックチェーンを金融インフラとして利用する際のリスク軽減策や規制枠組みの整備が不可欠だと指摘している。これは単なる仮説上の極端なシナリオではなく、ステーブルコイン等の広範な利用が進む現状を踏まえた上での、規制当局に対してネットワーク基盤そのものの安定性を監視する必要性を訴える内容となっている。
|文・編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
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