イーサリアム(Ethereum)の次期プロトコルアップデート「グラムステルダム(Glamsterdam)」に続く「ヘゴタ(Hegotá)」に向け、「フォーク・チョイス・エンフォースド・インクルージョン・リスト(Fork Choice–enforced Inclusion Lists:FOCIL)」ヘッドライナー候補(CFI)として推す提案が、1月27日に開発者フォーラムEthereum Magiciansで共有された。FOCILは「EIP-7805」として仕様が提示されている。
FOCILは、イーサリアム上で発生したトランザクションが、プロトコルのルール上有効である限り、一定の条件のもとでオンチェーンに組み込まれることをより確実にする仕組みだ。提案は、開発者向けフォーラム「イーサリアム・マジシャンズ(Ethereum Magicians)」上で共有された。
この提案の背景には、イーサリアムがスケーリングを進める過程で、取引の処理を担う主体が一部に集中する可能性についての問題意識がある。現在イーサリアムでは、トランザクションを組み合わせてブロックを構築する「ビルダー」と呼ばれる主体や、それを仲介するインフラの役割が拡大している。
提案文では、こうした構造のもとでは、特定の主体の判断や外部からの圧力によって、技術的には有効なトランザクションであっても、組み込み遅延や、事実上排除される余地が残ると指摘されている。これはイーサリアムが掲げてきた「中立性」や「検閲耐性」という価値観と緊張関係にあると位置付けられている。
FOCILは、このような問題に対しトランザクションの組み込みを市場慣行やビルダー個別の判断に委ねるのではなく、プロトコルのルールとして担保しようとする試みだ。複数のバリデータが取引の組み込みに関与できるようにすることで、特定の主体が恣意的に取引を選別する余地を小さくすると説明されている。
こうした設計により、イーサリアムが今後さらにスケールした場合でも、処理能力の向上と引き換えに取引の公平性を損なうことを避けられるという。スケーリングの進展に伴い、高度な設備や専門的な技術を持つ事業者への依存が強まるなかでも、誰のトランザクションであっても同じ条件で扱われる状態を維持することを目指すとのことだ。
一方で、FOCILは取引処理の高速化や手数料削減といった、ユーザー体験を即座に改善する技術ではない。実際、現在のネットワーク環境では、大規模な検閲が常態化しているわけではなく、FOCIL導入による体感的な変化は限定的とみられている。
それでも研究者でFOCIL提案者のトーマス・ティエリー(Thomas Thiery)氏は自身のXで「問題が顕在化してから対処するのでは遅い」とFOCILを提案した背景を説明している。提案文書でも、将来の市場構造や規制環境の変化によって、大規模な検閲リスクが突然高まる可能性を否定できないとし、あらかじめプロトコルレベルで安全装置を組み込む必要性が強調されている。
FOCILは、短期的なスケーリング施策やUX改善と比較すると効果が見えにくい一方で、イーサリアムが掲げる「中立性」や「誰でも平等に使える基盤」という価値を将来にわたって守るための基礎的な取り組みと位置付けられている。
FOCILの仕様についてはすでにレビューが進んでおり、複数のイーサリアムクライアントで試験的な実装も行われているという。今後、開発者コミュニティでの議論を経て、「ヘゴタ」アップデートに含めるかどうかが検討される見通しだ。
参考:イーサリアム・マジシャンズ
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