ミネアポリス連邦準備銀行のニール・カシュカリ総裁は19日、ファーゴで開催されたMidwest Economic Outlook Summitでのオールド・ナショナル銀行のジム・ライアン最高経営責任者との対談で、暗号資産(仮想通貨)とAI(人工知能)について見解を示した。カシュカリ総裁はビットコインを「全く無用」と切り捨てる一方、AIの生産性向上効果には楽観的な姿勢を示した。
カシュカリ総裁は、AIと暗号資産の実用性を比較する形で発言した。「過去1週間にAI(ChatGPT、Gemini等)を使用した人は?」と問いかけると、会場の多くの手が挙がった。続けて「ビットコイン
BTCで何かを売買した人は?」と問うと、ほとんど手が挙がらなかった。
「暗号資産は10年以上存在しているが、全く無用だ。一方、AIは登場して間もないが、人々は毎日使っている。これは、AIが本物であり、米国経済に長期的な可能性があることを示している」とカシュカリ総裁は述べた。
同総裁はAIについて「今後5年、10年、あるいはそれ以降の生産性向上の原動力になる可能性がある」と期待を表明。企業、特に大企業のほぼすべてが何らかの形でAIを使用しており、実質的な恩恵を見出していると指摘した。
ライアンCEOがオールド・ナショナル銀行のトークン化預金ネットワーク開発について言及すると、カシュカリ総裁は率直な疑問を投げかけた。「ステーブルコインを使えば、現在のVenmoにはできない何ができるというのか? 私は誰にでも5ドルをVenmoやPayPal、Zelleで送金できる。この魔法のステーブルコインは一体何ができるのか? そして私が得る答えは、バズワードサラダだ」。
同総裁は「トークン化預金」「ブロックチェーン」といった用語が飛び交うが、具体的に何ができるのか明確な説明がないと批判した。
ライアンCEOは「クロスボーダー決済で、より少ない摩擦とコストで送金できる可能性がある」と応じたが、カシュカリ総裁は国際送金の実用性にも懐疑的な見方を示した。
同総裁はフィリピン出身の妻の家族への送金を例に挙げ、「義父がマニラで食料品を買うにはどうするのか? 何かが彼のアカウントに入っても、それで食料品をどう買うのか? 結局、現地通貨に変換する必要があり、それにはコストがかかる」と指摘した。
「もし食料品店もそれを使えば買えると言うが、それは結局、世界中の全員が同じ通貨または同じ決済プラットフォームを使えば、すべての摩擦がなくなるということだ。しかし、他の国々は独自の金融政策を放棄しない」と述べた。
カシュカリ総裁は「暗号資産やステーブルコインについて何かを聞いたら、最も基本的な質問をして、バズワードの無意味な答えで納得しないことだ。それが実際にどう機能するのか、本当に説明させる必要がある。私がそうすると、そこには何もない」と結論づけた。
カシュカリ総裁はAIの可能性を認める一方、連邦準備制度による活用には慎重な姿勢を示した。「機密性の理由から、非常に慎重だ。私がChatGPTに『金融政策をどうすべきか?』と入力するわけにはいかない。それは(データが)あちこちに行ってしまうからだ」と説明した。
連邦準備制度は、AIの使用に関して厳格なガードレールを設定している。研究者は独立した研究でAIを使用しているが、機密データがシステムに入ることは許可されていない。「どこに行き着くか分からないため、連邦準備制度の機密データをシステムに入れることはない」と強調した。
カシュカリ総裁の発言は、連邦準備制度の主要メンバーが暗号資産に対して極めて懐疑的な見解を持ち続けていることを示している。一方で、AI技術については実用性と経済効果を認めており、金融政策当局者の間でもテクノロジー評価が二極化している状況が浮き彫りになった。
暗号資産業界は近年、機関投資家の参入やビットコイン現物ETFの承認など、主流金融への統合を進めてきた。しかし、連邦準備制度の高官が公の場で「全く無用」と断言したことは、規制当局の根深い懐疑論を改めて示す形となった。
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